解りにくい人の、解りやすい想い
九州男児の主人は
筋金が背骨に一本入った
「男児」です。
ご時世に逆行しているのも
自分なりの信念で突き進んでいるのも
承知して、
いささか残念ではありますが、
私は連れ添っております。
有難うとか、
よろしくとか、
たった一言いってくれたらな、
と、
世の中の仲良し夫婦を眺めては
溜息を吐きたい時も
無きにしも非ず。
だから、
気持ちが行き違って、
いつもの倍ほど疲れて、
互いにどこへ向かいたいのか
見失ってしまう事もあるんですが、
ふと、こんな御馳走を並べたテーブルで、
気難しそうなニコリともしない主人の顔を見ながら
余計なおしゃべりなどせず、
黙々と、箸を上げ下ろししていると、
自ずと笑ってしまう事があるんです。
麻婆豆腐、
親子丼、
焼き鳥、
モッツァレラピザ、
おでん。
やたら長い名前の付いた
お洒落なディナーなどではなく、
庶民的な、
もっと自己主張のしっかりした食べ物が
好みに合う主人が、
さして感動した素振りも見せず、
私の前でフォークやナイフを動かしている。
何も言わない所をみると
不味くはないのだろうけれども。
私を喜ばせようと
隠密裏に計画していたのは、
知っています。
貴方の心遣いは、
派手でなく、
恩着せがましくもなく、
あまつさえ、
不愛想という厄介なオブラートに
何重にもぐるぐる巻きにされているけれど
私は、
貴方の
伴侶ですもの。
解りにくい人の、
精一杯の私への労いの想い。
確かに、
頂戴いたしました。
御馳走様でした。
今日の日を
有難う。