あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

背中で語る。

 子供(男子)の習い事と言えばなんでしょうか。サッカー、野球、水泳。水泳は男女問わず「心肺機能を高める為」「水に対する抵抗をなくす為」「負担を掛けない有酸素運動」等の理由から人気でしょう。我が家も長男が3歳の頃に、何かしら体育をと思い巡らせた事もあったのですが、この面倒臭がりの母の悪影響で今の今まで、これと言った習い事へ通う機会にも恵まれませんでした。

 私の幼少期の習い事と言えば、書道やそろばん、公文がメジャーでした。水泳はその頃から人気で、実弟が実際に通っておりました。一方、ヒップホップダンスやらバレエやら横文字の物は発展的なお宅での事と捉えられている時代でした。塾通いをする子も少数派でしたね。小学校に入学する為に情操教育や礼儀や工作を習いに行くというのはもう別世界のお話。スクールバスというシステムさえ目新しい素朴な田舎で育った私が母になり、いざ息子にどんな習い事をさせようか、と思い巡らせてみるとこれと言った妙案が浮かびませんでした。長男が3歳の頃、まだオムツが取れていなかったので水泳は無理だろうとは思っていました。加えて彼は頭から水を被る事が出来なかったので、水中に潜るなんて言うのは論外(赤ちゃんの頃に、沐浴時、私が頭から湯を被せて以来、恐怖を感じるようになったようで)。習い事をさせる時の基本は、本人の希望がどの程度強いか、やりたい気持ちがどこに向いているか、が重要だと思っているので、まずは彼のベクトルを手探りするところから始めています。

 物心つく前から始めるのが良しとされるのは英語や体操(リトミックも含めて)なのだと言われますね。音感を鍛えるのも3歳頃が一つのラインであるらしいです。教育熱心でない私は、ともすればあまり子供にはよろしくない親であるかも知れません。彼等の未知なる才能を見逃しているとすれば、ちょっと後ろめたいところであります。

 5歳になった今、長男の運動能力に不備な点が見当たらないので、またぞろ習い事を考える時節となりました。座学というよりもやはり運動をメインにした方が良いと思うので、それとなく周囲を見渡してみると水泳の人気は何歳になっても根強いのが分かりました。息子に水泳教室に通う意志を問うてみましたが、行きたくない、と即、却下されてしまいました。私自身が「木槌」(金槌、ではない、泳げないが、浮く、ので)であるので「面白いからやってみな」などと無責任な勧誘は出来ませんでした。本人が乗り気でないのなら無理強いしても仕方ありません。それなら、武道はどうであろう、と思ったので「剣道」を勧めてみました。心技体を研ぎ澄まし、礼に始まって礼に終わる「静」なる内の「動」を操る日本男子らしい武術は、少し神経質で几帳面なシャイボーイには似合うのではないかと思いました。「剣道って何」と訊き返してきたので、動画で剣道の全国大会の最終戦を視聴させました。高校生同士の打ち合いをしばらく眺めていた彼だったのですが、少し私が目を離した隙に、リモコンを勝手に操作して、いつの間にやら大好きな戦隊モノのヒーローショーにチェンジされてしまっていました。

 大人の思う「カッコよい」と彼等が思う「カッコよい」の相違なのでしょうね。確かにゴツゴツした防具を付け、竹刀を振りかぶった大柄な男子同士が「キエーっ!」とか「ぅるあああっ!」とか叫びながら打ち合っている様は、5歳児には恐ろしくもあったでしょうか。「その凛とした佇まいが」とか「精神の崇高さが」とか「礼儀を重んじる武道の心得が」とかは、まあ、我が家の息子には荷が重い事ではありましょう。

 子供の適正を見極めるのが親の大切な役割とは言うものの「俺、これやってみたい」と言い出してからでもいいかな、などと呑気に構えておる親なので、世間様の目指す教育熱心とはますます程遠い家庭環境とは言えましょう。私の母は「鉄は熱い内に打て、だからね」と娘のやり様にかなり不満な様子。月謝くらいの援助ならおばあちゃんがしてやるから、と鼻息荒く申し出てくれるのは有り難いのですが、さてはて、どうしたものやら。

 ともあれ、人様に預かっていただいて、家庭とは別の環境で心身を鍛える世界はいずれ味わってもらいたいものと思っております。辛抱強くもなってもらいたいですし、自分を研ぎ澄まして願望を叶える術も身に付けていってもらいたいです。近親が諭しても響かない事が、全くの他人から伝えられた途端に身に染みる、と言う事も多いです。

 特に我が家は男子2人です。この先の予定は分かりませんが、兄弟2人で生きていくのだとしたら、母心として「男子たるもの、ずっと、うんと、カッコよく」あって欲しいと思います。男子だからとか女子だからと言い立てると、頭のイイ方達に「ジェンダーが~」「男女差別の云々~」と非難されそうですが、母はともかく息子が「カッコよく」ある姿を望んでおります。芯が太くて、有言実行(無言実行でも大いに結構)、背中で語る人、信念を持つ人であって欲しいと心から願います。眉目の美醜は、おまけです。立ち姿の凛とした、振る舞いに品のある男子は、もうそれだけで「カッコよい」。

 弱い人が、無理をして強がらなくても良い環境を作ってあげられる男になってもらいたいのです。弱い人の盾になって、それでも「へっ」と笑っていられる人になってもらいたいのです。やりたいようにやればいいと思います。迷惑をかけない、くさらない、尻尾を巻いて逃げない、そんな風なちょっとお茶目なやんちゃ坊主。それを地でいける一人前の男子になれるのなら、それこそ母の望む所であります。

 保育園に行くと、5歳児長男のファンが結構います。下級児童の女の子からは猛烈なアタックもいただいております。同級児童の女子からは「●●君に意地悪されたんだよ」と息子のクレームをいただいております。まずまずのポジションで、彼も己の「男子道」を歩んでいるようです。迷いながらも、泣きべそかきながらも、日々を生きている彼が、いつの日か自分の「カッコよい」を見つけられたら嬉しいです。息子が全てを傾けて守るモノが出来れば母は本当に満足です。「カッコよいぞ、息子」と笑って彼の手を離せる日が来る事を、今から私は楽しみにしております。