あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

涼風至(すずかぜいたる)寒蝉鳴(ひぐらしなく)

 「秋です」。

 などと文字にしてみても実感がないくらい、照り付けが厳しい毎日です。28度設定の空調で、閉め切った室内にいても、料理の為に台所に立てば、たちまちこめかみから雫になった汗が滴り落ちてまいります。ただ、暦の上では「立秋」も過ぎ、暑中見舞いを出すには時期を過ぎたこの頃ではあります。そもそもが、七十二気候は旧暦に添っていますから現代人の我々には体感は妙であります。

 夜になっても25度を中々下回りません。寝室の窓をキッパリ開け放つよりも、ついつい空調に頼ってしまう日々。タイマーを掛ければ掛けたで室温の上がり切った寝苦しさに途中で目が覚めますし、朝まで空調を掛け続ければ身体の冷えや喉の渇きで寝起きが良くありません。氷枕や冷感寝具でやり過ごそうにも、大人はともかく寝相の崩壊した子供達はいつの間にやら冷たさを求めて畳の上へ転がり出て行ってしまいます。扉と言う扉、窓と言う窓を開け放して、天井からは蚊帳を吊って蚊やりの線香を縁側に炊いて、団扇でやり過ごすような懐かしい眠り方が出来るのなら全くそれに越した事は無いのですが、昨今の熱帯夜や、物騒な世の中とかが物理的なハードルになるのは悲しい事です。

 ただ、大きな台風がいくつか過ぎた辺りからちょっとした変化がありました。気付いたきっかけは「虫の声」。夜更けに降る雨に気付いて、薄く開けていた窓を閉めようと起き上がりました。網戸の向こうから、タップリと湿気を含んだ重い空気が流れ入ってきます。これで、少しは涼しくなってくれればと耳を澄ませば、濃度のある闇の中から途切れ途切れに虫の声。ホロリホロリと口の中で鈴を転がすような優しい鳴き声が微かな雨音に混じって聞こえてきます。時々、どこかで雷が鳴っているのでしょうか、雲の一角が白く明るく光ります。私が幼い頃は、夏の夕暮れ時には必ず夕立が降りました。邪魔な物を洗い流すような激しい雨が降りしきった後は、あっけらかんとした宵の静けさが残されていました。うだるような夜と、すっきりしない明方とが繰り返されていたここ最近でしたので、ちょっとした疲労が溜まっていたのでしょうか。秋の虫が、律儀に夜を鳴き通す、そんな悠長な夜も実に新鮮に思えたのでした。

 「秋です」。

 まだ、その呟きは、いくらか空々しいですが、こうやって夜の片隅から少しずつ、季節は移ろっていくのだと気付かされた一コマでありました。

 

 

 (1000文字雑記)