あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

夢を食べる。

 子供の頃に憧れたのは、自分の大好物が山のように積まれた風景です。心躍る物が、視界を埋め尽くす、それに興奮するとは実にいとけないというか、無垢というか、他愛のないものですね。けれども、子供にとっては結構本気で叶えたいような夢であったり、譲れない願望であったりするわけです。

 私の子供達は果物が大好きです。バナナ、蜜柑、キウイフルーツ、葡萄、林檎、梨、パイナップル、柿、凡そ果物であれば、こちらが出すだけ手を伸ばして来ます。特にこれから初夏にかけて楽しめるのは苺でしょうか。紅くて、ふくよかで、愛らしい、実に食欲をそそられる果物です。

 苺の香りには、人を幸せにする成分が含まれています。果肉を噛みきった時に、甘い汁と共に、溢れ出した幸せの雫が、パッと胸をかけ巡ります。大人でさえそうなのですから、苺の誘惑に幼い人達が抗えるわけがありません。食後である事を忘れるような食い付きで、盛り付けられた苺を貪ります。

 本来、苺の旬は麦の芽が伸び育つ初夏の頃です。ハウス栽培や品種改良、外国からの輸入で年中手に入る苺ですが、小売価格がお手頃になり始めるのは、やはり今くらいからでしょうか。それで、母は、ちょっと奮発しまして、近場のスーパーマーケットで2パックの苺を購入しました。自宅の冷蔵庫には、前の日の残りが半パックある中で、です。

 洋菓子店でショートケーキを買えば500円はするでしょうか。この頃の苺のパックも1パックはそれくらいでしょう。ケーキを2ポーション買ったと思えば、大粒のとちおとめ計18個も遜色ありません。

 その全部を、水洗いし、食べやすいように縦1/4カットにして、山盛りにして昨日の夕食後、食卓に出してみました。通常サイズのラーメン鉢に、ツヤツヤと輝く紅い苺が、文字通りてんこ盛りです。

 子供達は大喜びで歓声を上げました。いつもはもったいつけて小皿へお上品に飾られて出て来る大好きな苺が、ラーメン鉢の縁から零れんばかりに盛り付けられて目の前で小山を作っているのです。漫画の世界のような、いささか冗談めいた出来事に、子供の心は素直に反応するものなのです。6歳児と1歳児(もうすぐ2歳)は、リスのように頬を膨らませ、紅く輝く苺の山を食い始めます。掴んでは食べ、食べては掴み、それはそれはお腹がパンパンになるまで頬張りました。

 普段、彼等に寂しい想いをさせている母よりのささやかな罪滅ぼしなのでした。

 

 

 (1000文字雑記)