流れの中に、棹をさす。
イベントが大きく盛り上がる中、元々の意味合いが希薄になり、それにかこつけてお祭り騒ぎになってしまった行事が多くあります。オールシーズン快適に過ごせるようになった生活環境も要因の1つではないでしょうか。暑ければ暑い、寒ければ寒い、恐らく昔は屋内にあっても気候や天候に左右される事は少なくなかったでしょう。大雪が降れば、日常の買い出しも出来ないどころか、日々の稼ぎも制限されました。蒸すような陽気でも、薄着をして団扇を使うしかありませんでした。
外が悪天候でも、ネット回線1つあれば会議が出来て、居ながらにして大きな商談は纏まります。寒い日に空調の利いた部屋でテレビを観ながらアイスクリームを頬張る事も出来ます。
心地よく暮らすのは素晴らしい事です。生活が自然環境に脅かされないのは掛け替えのない事でもあります。実感として味わえないのですから季節感が失われていくのも、仕方がないのかも知れません。
ただ、少しだけ、立ち止まりたいと思います。
稲田が金色に輝く風景を、いつまでも美しく感じたいです。寒さが緩んだ日に、道端の蕗の薹に感激したいのです。生まれる何かを、慈しみ、燃え尽きて行く何かを、惜しみ続けたいです。