あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

二つの瓜

そんな事、我慢しなくても良かったのに、と、子供を抱き締めてやりたくなる時がある。けれど、子供とて我慢している最中は、他の事に気が回らないくらい必死だったろうとも思う。「大人に相談できる」という方法があって、しかもそれはごく妥当な安全な方法であると分かっていれば、彼は迷わず私に相談したことだろう。「そんな事」を我慢させてしまった私にも当然、「打ち明けて欲しかった」という情けなさは残るし、でも私に打ち明けるアイディアを思い付かなかった彼の悲しさも痛いほど分かる。

遠慮とか、気遣いとかではない、彼は、全く、大人に頼るという事を思い付きもしなかったのだ。後々に、「ああ、そうか、そういう方法もあるのか」と知るだけで、当時、彼は、世間の全部と戦っていたのだった。

ああ、こんなところも「我が子」なんだな、と泣き笑いしたくなる。小さな身体に、精一杯の「正しさ」を詰め込んで、大切な物を守って、傷付く。我が子よ。

謎から生まれた事が、謎のまま、立ち消えになった件

「さっき、(外で)誰がいたと思う?」と、学童保育所から帰宅した長男が嬉しそうに私へクイズを投げてきた。「学校の先生?」「違う」「〇〇君?」「違う」「えー、分からない」。息子が興奮しているのは明らかだった。「ねー、誰だと思う、いいから、答えてよ」「分からないよ、誰、有名人?」「超、有名人」「超有名人が、こんな(東京の)田舎にいる?」「いるよ」「誰?」と、私がのらりくらり受け応えをしているところへ、彼が胸を張って、「HIKAKIN(ヒカキン)!」と、報告してくれた。

「嘘でしょ?」「いたよ」「HIKAKINだよ?」「いたよ」「嘘でしょ」「ホントだもん」「本当にHIKAKINだった?」「うん」「嘘でしょ?」。この辺りを長々繰り返した。

私自身が目撃したわけではないので、嘘とは決めつけられない。子が見たのなら「子は見た」のだ。「他の人、いた?」「(彼)自転車乗ってた。みんな、うわーってなってた」。

そう、私が目撃したわけでは、ないから。

早苗の頃

田を耕す人が減り、私の故郷の風景もだいぶ変わった。鬱蒼としていた神社の参道も、大幅に刈り込みの手が入り、並木は随分と殺風景になってしまった。ここ一年、帰省はできていないが、今頃の田植え時期は、どうなっているだろうか。

父が譲り受けていた畑は、大型ショッピングモールの駐車場になってしまった。私が子供の頃には、肥料用に咲かせてあったレンゲの花を、よく摘んで遊んだものだ。

紀の川の堰も、用水のために開けられている頃だろう。冬季には滞ってしまっていた水の流れが、あちこちで勢いを取り戻しているに違いない。蛍は飛び始めただろうか、蛙はうるさいほど鳴いているだろうか。それでも、今なお、残っている水田には緑鮮やかな稲の苗がなびいているだろうか。

家を守る母がいなくなれば、私の故郷は文字通り消える。思い出が麗しいものであるほど、変化を受け入れがたくなる。私の知らぬ場所がいずれ誰かの懐かしき場所になる。さりながら。

「嫌い」ってどこからやってくるの? (ちょっと苦手な虫の話。駄目な人は回れ右)

興味を持って観察しようと試みる人には申し訳ないが、私はゴキブリが苦手である。幼い頃には、おびただしい数の毛虫を箱に入れて飼った事もある私だが、ゴキブリにはどうも好意的な印象を持てない。昨年、秋の終わりだったか。夜中、寝る前の身支度にブラシで髪を梳かそうと思った時の事だった。一櫛、髪へとすき入れたブラシの毛先に違和感があった。首筋に、黒い塊が、コロリと落ちてきた。500円玉ほどの大きさのその影は、カサコソと私の肩を滑って、床に落下した。洗面所の白熱灯に浮かび上がったソレは、ゴキブリだった。

たまげた。魅入られたように動けなくなるというが、私は逃げるでもなく、声を上げるでもなく、硬直してしまった。

何かを嫌う感情というのは、どこから発生するものだろうか。道端でうずくまっている例の虫を指さし、長男などは面白そうに顔を近づける。虫遊びを好み始めた次男が、いろいろ拾って来る昨今に、ふとそんな事を考える。

自由な国の自由な飲み物。

生姜、ナツメグ、クローブ、シナモン、黒胡椒、カルダモン。小鍋に入れたこれらを少量の水と共に、加熱する。エキスと香りを十分引き出してからCTCの紅茶を加える。再び煮立ったらすぐに火を止め、蓋をして蒸らす。湯が黒褐色に染まり、鼻に抜ける程の香気が漂っていれば、そこへ、たっぷりの牛乳を注ぎ入れる。膜が張らぬよう泡立て器でゆるくかき混ぜつつ液体にしっかり熱を通す。沸騰寸前で鍋を下し、出来上がった香り豊かな紅茶を漉せば、そう、チャイの完成である。

熱くても冷たくても美味しい。振り幅の大きさは、同じくカレーも一緒だ。組み合わせるスパイスは好みだ。私がこの飲み物を知ったのは製菓学校職員時代で、これを取り上げた講習があったからだが、ナツメグと黒胡椒を追加するようになったのは、街のカフェでチャイのトッピングとして別添えの香辛料の瓶が給されていたのがヒントだった。

大らかな飲み物だなと、作るたびに微笑ましく思う。