御馳走様のあとさき
ショリショリショリ。
ショキショキショキ。
無心になって
研ぐ。
数多の食材の中で
唯一
「洗う」でなく「研ぐ」
米。
たっぷりと贅沢に水をくぐらせ
磨き上げるように、研ぐ。
我が家の料理はここから始まる気がする。
誰かの為に台所に立つ毎日だけど、
この作業だけは、何故かどこかで
私の為という気がする。
手を止めると余計な水を吸う、
押し過ぎると傷が付く、
研ぎ足りないと雑味が残り、
研ぎ過ぎると味気ない。
随分と我が儘な米の精神が
ちょっと生意気で面白い。
良い頃合いで素直に研ぎ上がると
すっくり豊かな艶が出る。
合格。
若い時、ある先輩が米とぎを教えてくれた。
「新鮮なお水を吸わせてやってね」
まるで、生き物を扱うような優しいアドバイス。
御馳走の始まり。
相手の為に旨い物をこしらえるということ。
ショキショキショキ。
無心に。