あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

佇まい、端麗

落語には

気安い小店で

蕎麦をたぐる人が

しばしば登場する。

噺家の調子もあるのだろうが

実に旨そうに蕎麦を食す。

 

新年の願掛け帰りに

立ち寄った蕎麦屋

肩肘張った老舗でもなさげで

我々子連れが戸を開けるのに

何の躊躇も要らぬ小奇麗な店であった。

 

店の前の駐車場には停められた車はない。

真新しい引き戸の白木は

質素であるが品も漂う。

正月早々の営業、

店主の心意気は見上げたものだが、

客足は大丈夫だろうかと

余計なお節介を想いながら

入店し、それが杞憂に終わる。

 

カウンター、テーブル、座敷。

狭くはない店内は満席。

買ったばかりの破魔矢を傍らに置いた人、

可愛らしい着物姿の女の子も

正月らしい店内の彩りである。

 

やがて運ばれて来た蕎麦に

口許が緩む。

 

注文したのは

天ざる蕎麦に

鴨南蛮蕎麦。

親子丼は子供用に

ご飯を控えてもらってある。

 

f:id:akarinomori:20180102012924j:plain

 

まずは一箸、

蕎麦をたぐる。

のどごしの良さと程よいコシ。

淡い緑を帯びたなめらかな艶。

含んだ瞬間の穏やかな風味。

漬け汁も出汁が利いたこっくりとした

味わいで、それでいながら、

見た目よりもしつこさが無く、

ほんのりと甘みのある優しい味わい。

意地汚い話であるが、

私は早く蕎麦湯を足して、

おつゆを頂きたかった。

 

蕎麦はそもそも酒のアテでもあるのだが、

主人は黙々とビールジョッキを傾けながら

注文の天ざる蕎麦を賞味していた。

食事時には

大抵無口な人が、

一言、

「旨いな」

と漏らしたのは、印象的ではあった。

 

小さな幸せに遭遇すると

どうも正月ムードは

一気に盛り上がる気がする。

 

f:id:akarinomori:20180102014221j:plain

視線を上げれば

天井近い壁の上方に

随分派手な正月飾りの熊手。

なんと粋な開店祝いであろう。

 

f:id:akarinomori:20180102014350j:plain

 

松に俵に、

小槌にめでたい!

 

 

正月に旨いもの有り、

幸先の良い出来事を一つ、

私はここに記しておく。