振り積む雪、草木眠らせ
玄関先が
明るく照り返していた。
ドアを開けると
冷気が吹き込んだ。
足元から上る
張り詰めた気流に
白い息を丸く吐いた。
結晶の形をしたまま
降り積もり
降り積もり
音を吸い込みながら
景色はいよいよ明るくなる。
新雪を眺め渡した時
人が自然と口をつぐんで黙してしまう様は、
厳格なしきたりのようだと
長い間、思ってきたものだ。
発してはならない話声などありはしないのに
白い世界に出会うと
人は少なからず、言葉を失くす。
何故なのだろうなあ。
胸の奥に、
しんと静まり返った
淡い彩りの鉱石を抱えたようになって
しばし、
雪と同化する。
我に返って
自分の行く道を見つけるのだけれど
後ろ髪を引かれるみたいに
雪に記された足跡を見下ろす。
探し物を求めるような
不思議な感覚。
どこかへ向かう事が、
小さな禁忌を犯すようで、
私はいたたまれず、
急いで
堅固にドアを閉じる。