夢を食べる。
保育園から帰って
玄関扉を開けた長男が
真っ先に見せてくれた
真新しい雪。
頭にも
リュックサックにも
結晶になったダイヤモンドの粉を
いっぱい付けて。
玄関灯の
黄色い光に照らされた、
輝く雪。
寒かったでしょう、おかえり。
出向かえた私の声が聞こえなかったように
霜焼け寸前の真っ赤な指先で
握り込んだ雪玉を見せる。
「ほら、ふわふわ」
興奮した君の上ずった声は
花火のきらめき。
「綿あめみたいでしょ」
そうだね。
「美味しいよね」
どうかな。
「甘いよ」
だといいね。
「ほら」
積もりたての
氷の結晶を頬張りながら
満足気な笑い声を立てる君。
私も、
ずーっと昔、
そうだったなあ。
空から降る雪の姿は
おとぎの国の儚い宝物のよう。
嬉しくて、
特別で、
足先がふっと浮き上がる。
届かない世界に
たんまり蓄えられた夢が
地上に降り積もった日。
冷たい指を温めながら
子供達は
むしゃむしゃと
甘い夢の欠片を
食べる。