あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

暗がりに立つ灯台に昇り、黒い海原を眺めて、家へ帰る。母にはそんな夜の散歩があっても良いのです。

横になったまま

浅い眠りから目覚めれば、

私と同じ顔の傾きで

向かい合って眠る

病気の子。

 

対になった私達は

相似形の

生温かい

別れたばかりの萌芽。

 

苦しみの合間に

わずかばかりの安眠を盗む

病んだ人の寝顔を見つめながら

生まれたての頃の君と過ごした

乱暴な蜜月を思い出す。

 

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凍る風が月夜をなで、

外界では、

明日の為の霜柱が

ミシリミシリと

硬い土を耕していることだろう。

ミシリミシリと

甲高い奇声を発して

世界を押し上げ踊っていることだろう。

 

胸につかえた物を吐き出し

腹に溜まった物を放り出し、

束の間の安眠の中に墜落する子。

私はぬくもった寝床から這い出し、

温かい茶を飲み、

冷え切った空気にすくみながら

あの懐かしい

病み疲れた日を思い出す。

人の親でもない

人の妻でもない

人の子でもない

何者でもない私は

誰にも求められずに

温まった湯飲みを両手に押し包み

熱い液体を呑気にすする。

分別の良い未明のおおらかさは

私の逃亡を

私の気ままを

私のやり場のなさを

私の溜息を

私の愚鈍さを

私のずる賢さを

私の短気を

私の冷徹さを

私の小ささを

無彩色の沈黙をもって

どこまでも無制限に赦す。

 

この誰にも顧みられない冬の日に

君は私の胎より

自ら外へ出る事を望んだのだな。

今日よりも

暖かな陽射しの日もあったろうに。

今日よりも

美しい月の日もあったろうに。

何を想って

こんな寒空の下で

さして慈悲深くもない母の元を選んで

君はやってきたのか。

 

穏やかな涅槃の頃を想う事があるだろうか。

健やかな開眼の頃を想う事があるだろうか。

病み疲れた幼い脆い身体を引きずって

君は何故に母を探すのだろうか。

 

おめおめと生きて来てしまった十字路の脇に立ち、

母は夜闇の底で

熱い茶をすすっている。

君の再び母を求める声を耳にするまで。

おぎゃあ、おぎゃあと

君が手を伸ばすまで。

おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ。

懐かしい声。

愛おしい声。

腹を温める熱い茶が

やがて巡って、

涙になる。

 

子供を産んだ女の神々も

我が子の夜泣きに苦しんだ事もあるだろうか。

乳にすがりついて母を悩ます子に

同じように泣きたい気持ちでうずくまった事も

あるだろうか。

神様でさえ苦労する子育てなのだ。

とるに足らない下界の民が

どうしてするすると育児が出来る。

 

横になって

向かい合い、

病んだ我が子の顔を見る。

それしか出来ない夜もある。

 

それでいいんじゃないだろうか。

少し泣いて

気が晴れたら、

また眠って夜明けを待とう。

 

明日は良い日。

そう決めよう。

明日は良い日。

違いない。

何者でも無くて

良いではないですか。

 

吐き出し尽くして

まっさらになったなら、

また君が待つ、

寝床に戻ろう。

まっさらな私の身体を

明日から一筆一筆、

鮮やかに染めていこう。