いぶし銀という生き方
待ち遠しかった発表会の日
君が抜擢されたのは
主役の猫達に喰い尽くされる
「魚」。
の、その他大勢。
台詞もなく、
ただ画面の背景に溶け込んで
猫達の大活躍を見守ります。
先生は
君の台詞の少なさや
地味な配役(と思われたみたいです)に
「彼なりに頑張ってくれていたので……」と
しどろもどろで私に報告してくださいましたが、
いいえ、先生、ご心配なく、
彼の笑顔がその答えです。
彼等の為の
晴れやかな舞台です。
毎日、練習した舞台です。
彼等が活き活き楽しかったなら
それが全てじゃあありませんか。
夢から覚めた君の姿は
役を果たし終えた男の姿です。
よくやり通しました。
カッコ良かった。
誰から見えない場所に居ても
君は誰かの一部を作る。
それを喜ぶ君の姿に
母は不覚に惚れ直しました。
どこにあっても
忘れないで。
「カッコイイ」を
貫いて。