あの時のハレルヤ
物思いに沈んだ時、
遥か前方を見渡す人は
少ない。
打ちひしがれるような
哀しみに胸が絞られる時、
晴れ渡る空を見上げる人は
少ない。
視線は足元へと引っ張られ、
背中には重いお化けが
覆い被さる。
久し振りに出掛けた先で出会う、
道路脇に実ったたわわな果実。
私は、
全てを振り切って
顔を上げ、
目を見開き、
空を背景にした逞しい果樹を見つめている。
平穏ではない時間を過ごしたとしても
楽観を許さない日々が訪れたとしても、
私の眼差しは
天を仰いで、見飽きない。
大丈夫、乗り切れる。
生きようと走り出す身体がある。
この場所で踏み切って
踊り込む、次の渦へと。
魂が私に嘘を吐かないのなら、
私は、そう、大丈夫。
豊かな実りの
その大樹の更に上、
宇宙の青が輝く天へ、
背骨を突き抜けて、
命が飛び立つ。
蹴った大地に水輪が広がり、
地響きを立てて光が炸裂する。
羽音、木霊、賛美歌。
ここにない地図に向かって、
私は
太陽を連れて、
歩き出す。