あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

ほどける音

雪の消え残った道。

陽だまりを拾いながら

少しゆっくりと歩く。

斜めに横切っていく小鳥の鳴き声。

振り返ると、

薄紅の梅の花

 

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爽やかで甘美な香り。

ふくふくと馥郁と。

どこかで響く、雪解けの音。

パチリ、パチリ、凍った空気が弾ける音。

春が追い付いて来たのかと

眺める先には、

まだ薄ら寒い風の中、

青々と茂る高木にまたがり、

剪定バサミを動かす人の姿。

梅の花の香りの上に、

浮かぶように腰掛ける植木職人。

 

パチリ、

パチリ、

切り終えた小枝を払う

わずかな休止符があって

パチリ、

パチリ。

 

父も、

生前は、

飄々と風に吹かれながら、

小さなハサミで大木の枝先を

払っていた。

 

松を手入れすれば、松の、

イブキを手入れすれば、イブキの

すがすがしい残り香を背負い

真っ黒に日焼けした顔をほころばせ

帰って来た。

 

指先も凍てつく早朝に出掛け、

明るい日没に埋火の名残を纏って

門をくぐる。

子に甘い、

少年の眼差しをした人。

 

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梅が咲けば喜び、

桜が咲けば遠出をする。

 

巡る季節に、

胸躍らせた人は、

踊り疲れて

眠ってしまった。

 

お父さん、

春です。

 

梅の花

こんなに美しい

春です。

 

お父さん。

 

お父さん。