あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

銀河鉄道は、夜。

私の故郷は

大変な田舎であったから

夜になると、

ただ一線しか通らない鉄道が

黒い山肌を巡り、

光の筋を引きながら流れ星のように

街の方へ帰って行く。

 

電車の窓から射す

粒ぞろいの黄色い照明が

一列になって闇色の空中を

飛んでいる。

 

銀河鉄道だ、と

夢見る事もあったのだが、

やはり、

この響きは、

少し寂しい余韻を持っている。

 

ジョバンニが観た束の間の輝きは

親友カムパネルラとの別れの旅路を

彩っていたのだと思うと、

感傷的な、ほろ酔いのような

そんな気分になってしまう。

 

f:id:akarinomori:20180210062948j:plain

 

宮沢賢治が描いた兜率の天が

この空の上に

実在するのかは、不遜な私には解らない。

けれども、

遠くなっていく光の一筋を見送る時、

何故だか、

私は、

胸倉に熱い塊を押し付けられたようになって

頼りあるものへしがみつきたい気持ちに

なるのである。

 

f:id:akarinomori:20180210063316j:plain

 

灯りを落とした部屋の中を

新しい列車のおもちゃが

走る。

その列車に灯る電灯の光の中には

勿論、いわくありげな物語など

詰まってはいないだろう。

カラリと朗らかな楽しみだけが

他愛ないおもちゃの原動力であるはずだ。

 

それでも

銀河のほとりを

二人の少年を乗せて走った汽車が

プラスチックで出来たレールの上に、

懐かしい光の面影を引いて走る時、

私は、

故郷に残してきた

甘苦いものに

ひどく胸を揺さぶられる。

 

銀河鉄道は、

走る。

夜を。

思い出を連れて。