あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

春と道連れ

”良き旅を”

 

フランス語でそう名付けられた

芳しいハーブティー

沸かしたての湯を注ぐと、

パッと紅く染まった。

 

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柑橘類のドライピール、

桂皮、丁子、薔薇、

カシス、ブルーベリー、ジンジャー。

鮮やかな紅色は

ハイビスカスであろうか。

 

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家の者が

まだ寝息を立てている早朝。

冷え切った台所で

白い湯気に包まれて生まれた

蠱惑的な飲み物。

 

舌を焼きながら一口。

眉間にうずくまる甘い余韻。

花を嗅ぐように

また一口。

 

果たして

「旅」の季語とは

いつだったろうか。

妙に春めいた艶めかしい液体を眺め、

様々な赤色に揺らめく呼気を吐き出す。

そもそも旅が季節を負うものでは

ないのかもしれないが、

汚れなき怠惰な春が

それに相応しいようにも

私は思う。

 

春。

まだ、

明けやらぬ冷たい朝に身を置いて

花を求めて彷徨い歩く

初々しい

旅路の事を

とりとめもなく思い描く。

旅は

良き物だ。

すべすべとした手を差し出して

私を光の輪の中へと

誘い出してくれる。

「良き旅を」

祝福の言葉がとても似合う。

その旅こそを

良きものに。

 手を振る旅人を見送る時、

心をこめてそう願おう。

そして私も、

春、

白く照らされた陽炎の道を

向かい風と語らいながら

踏みしめてゆこう。