背徳
この声は
奥深くに仕舞っておかねばならない。
音になる前に
冷たい胸の中で
磨り潰しておかなければならない。
気を許せば
はみ出しそうになる荒々しい私が
整然とした世界を
台無しにしてしまうから。
細心の注意を払って
会釈する角度をも配慮して
友達も家族も
やり過ごさなければならない。
独りきりで深呼吸する姿を
見られなどしてはならないんだ。
だって、
私は良い子。
不揃いな起伏も
ざらざらとした表情も
皆は私に探していない。
だって、
私は良い子。
生まれた時から
そう決められていたのだもの。
貴女は良い子
良い子ねえ。
「私を決めた」のは
全然、別の人達。
貴女は良い子
可愛らしい。
そうあるように
決められたから。