コウノトリの憂鬱
私をめがけて
遠い場所から
ぽこっとやって来た人は
この世界にリズムを合わせる為、
病院のベッドでピカピカと
青白く輝いていました。
この世界が
生きるに値する場所かどうかを
たぶん、慎重に見定めてでもいたのでしょう。
青白い炎に炙られながら君は
自分のそばで眠っている
くたくたのみすぼらしい見知らぬ女を眺め
どんなに残念に思ったろうね。
どうも、自分が見上げているこの女は
「母」という存在であるらしい。
目の下に隈を作って、
ただ、おろおろと情けない仕草で
こわごわ自分を抱き上げにかかる。
危なっかしくて、全く迷惑な事であるな。
そんな事でも考えていただろう君。
私はまだ
君に「母」と呼ばれるにふさわしくないのだろうな。
もじもじと身振り手振りと泣き声で
軽くいなされ、呼びつけられる。
「母」と呼ぶには
不十分な女。
つむった瞼にユラユラと
幻みたいに行き来している私を
君は様々な試験で
試しましたよね。
何度もミルクを吐き、
何度も熱を出し、
何度も下痢をし、
何度も不機嫌になってみせて。
私が容易にくじけないか、
私が真摯に課題に取り組むか、
私が声を荒げないか、
私が最後まで君に向き合っているか。
ねえ、私を選んでくれた人、
私は君を
ガッカリさせていませんか。
君が望む者に、私が成れた日
どうか笑顔で
呼んで下さい。
「お母さん」