あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

ポラリスの涙

「お兄ちゃんが欲しいな」

食卓に座る君が笑顔で言う。

わずかばかりの傷もない

みずみずしいいつもの食卓で。

私にその笑顔を向けた後、

君はまた食事に熱中する。

すぐに返事が出来なかった私は

驚いたら良かったのか

笑い返せば良かったのか

悲しめば良かったのかそれさえ決めかねて

黙りこくったまま腑抜けた顔を

していたと思う。

 

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弟が生まれて

「兄」になって

それなりに「兄」を金メダルみたいに

首にぶら下げていた君。

そして、

「そう思っていた」母。

君は兄らしく振る舞い、

兄らしく過ごし、

兄らしく我慢し、

兄らしく保育園へと向かっていた。

 

でも、

たぶん、

「そうあるようにしていた」のは

私だったのだな。

もしも君に

今、お兄ちゃんがプレゼントされたなら

君は「弟」として

母に甘える事が出来るんだものね。

兄である自分には許されなかった我が儘も

「弟」であったなら見過ごされるんだものね。

 

きっと君は

何気なく、

思い付いたままの願望を

君の笑顔に乗せただけなんだ。

それは解ってる。

解ってる。

 

けれどね。

 

みずみずしいいつもの食卓は

小さな傷を負い、儚げなくすみを帯びて

曖昧な沈黙を続ける私の前に

ゆるゆると広がり続ける。

 

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