あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

雨音の讃美歌

雨音のような

さやさやとした歌声が

聴こえる。

閉じられたドアの隙間から

そっと覗くと、

豆球の橙色の光の中で

布団を掛けた君が天井を見上げて

唇を動かしていた。

 

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言葉を拾いながら

少し外した音程で

途切れ途切れの君の声が

薄暗い寝室に

流れている。

 

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赤ちゃんが眠いくせに泣いて寝ないというのは

実は眠りに入る感覚を

「自分は死んでしまうんじゃないか」と錯覚するかららしいと

聞いた事がある。

5歳の君は、

もう眠りを恐れる事も無く、

夢と現実の境目で

遠い空中を見上げながら

雨音のような

優しい歌を口ずさんで横になっている。

 

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暗闇には、

まだまだ君の知らないモノが

たくさんあるけれど

君はすでに

誰にも慰められないままでも

夢の扉を開きに出掛ける事が出来るんだ。

 

どうしてか解らないけれど

お母さんはふいに

泣きそうになってしまったよ。

 

君はきっと可哀相でもない。

君はきっと辛くなんてない。

 

歌を歌うのは

何かを癒す為でなくて

心の中で起こり得る事と

現実世界がまだあやふやな君らしい

感情の表現でしかないんだよね。

それが解っていてなお、

なんでかな、

お母さんは

涙が溢れそうになったんだ。

 

ポツリポツリと

部屋中にこぼれていく

君のかすかな子供らしい声。

 

保育園で

今日もいろんなことを

頑張って乗り越えてきたんだよね。

思い通りにいかない事の方が

多いのも知ってるよ。

朝、慌ただしい中、

どうでも良い事で怒ってごめんね。

あれもこれも

少し手を止めてちゃんと聞いてやれたら

よかったのにね。

我が儘を言いたいのに

グッとこらえてくれたよね。

バイバイした後、

振り返らずに教室に入って行った君。

平気じゃないのは

君だって一緒だったよね。

 

小さな身体で

たくさんのモノを守ってくれる君。

今日も君に守られて

我が家は我が家であれました。

 

何を思い描きながら

君は歌うの。

讃美歌のような君の歌声。

 

さやさやと

讃美歌や

響く。

 

 

(兄も弟も1歳時に保育園に入園しました。

彼等が体調を崩す度、小さな後悔と共にしばしば思ったものです。

「私、そこまでして、何で働いているんだろう」

発熱で真っ赤な顔をしながら、苦しそうに涙を流し、鼻水を垂らしている

子供達を置いて、仕事を続ける。予期せぬ残業が入り、預け先に延長保育の

お願いを何度入れた事か。保育中に具合が悪くなった子供を引き取る為、

あっという間に有給休暇は消え去りました。時に、何故このタイミングで

熱出すかなぁ、と、子供の不調を恨めしく思ったりもしました。同じく働く

人とは何度も何度も仕事と育児の事で喧嘩をし、仲直り出来ないまま最悪の

朝を迎えてまた同じ支度を繰り返して子供を預けて出勤していく。

「誰の為に働くの、子供を犠牲にしてまでしなくちゃいけない事?」

それでも働くのです。それはもう、金銭の為だけでは恐らく、無かったのです、

私にとって。子供の成長はあっという間です。その貴重な時間をつきっきりで

見守ってやれる事も確かに素晴らしい事だと思います。つぶさに観察できない

歯がゆさと悲しさは仕事を持ちつつ子育てをする保護者には付いて回るのかも

知れません。だけれども、子供を慈しむ方法はそばで見守る事だけではない。

手元から離れてしまう8時間なり9時間なりが、親だけでは与えきれない貴重な

何かを子供達に与えてくれるんですよね。

「私がいなくても、あの子はちゃんと幸せ」

これが根っこにあるから、私は胸を張って働いていられるんだと思います。

親ではない、優しく取り囲んでくれるあらゆる素敵なものが我が子をぐいぐいと

成長させていってくれると言う事。

「私がいなくても、あの子はちゃんと幸せ」

そう信じられる現実がもしあるのなら、私にはそれこそが、本当の意味での

我が子の幸福なのかも知れないと思っているんですよね。)