あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

椀の幸

 毎日、我が家は味噌汁が出ます。炊事は100%私の担当なので(主人が主張する「俺だってやろうと思えば出来るんだ。しかし、何もかも俺がしてしまうとお前(私)がそれに胡坐をかいて甘えてしまうからあえて俺は手を貸さないんだ」という内容。夫婦喧嘩の度に、グーパンチしてやろうと思うんですが、何なんですかね)、100%、私が食卓に出します。共働きで、外勤であるので、朝か晩のどちらかあるいは両方に味噌汁が登場するのですが、自分の家庭を築いてからずっとその味噌汁に使用する味噌を探しています。

 関西で育った私は、白味噌文化の中で育ちました。出汁はカツオでなく、出身の大阪泉州地方は「いりこ」つまり煮干しを使います。カツオに比べるとうんと淡泊で、磯の風味が僅かにする控えめな出汁になります。今は大手スーパーのティーバッグ式粉末イリコが便利な為、ストックは常に切らさない状態。食事作りはこれがないと始まりません。イリコ出汁と白味噌の味噌汁、具は玉ねぎと油揚げ、豆腐は必須で、ワカメやニンジン、大根はその時々で入ったり入らなかったり。

 味噌汁と御飯。二つがあれば、忙しい日々も食卓は何とか整います。味噌汁と鮭おにぎり。味噌汁と稲荷寿司。味噌汁と野菜炒め、味噌汁と親子丼。定番野菜に限らず、旬のもの、余り物、安売りだった物、味噌の中に沈められたあらゆる食材が、きちんと日々のバランスを取ってくれるんですよね。生では意外とたくさん食べられない野菜の量でも、味噌汁にすると必要量がすぐに摂れてしまいます。離乳食でも味噌汁が大活躍をしました。赤ちゃんに食べさせたい物を、とにかく、刻んで柔らかく出汁で煮込んで、仕上げに味噌を溶き入れるだけ。食物繊維も、水分も、そのものが発酵食品である味噌も無理なく口に入れられます。長男も次男も5カ月から離乳食を始めたのですが、あれこれ手の込んだ物を作る気力も知恵も持続力もなかった私は、どんなにこの味噌汁の包容力の高さに励まされてきた事でしょう。美味しい白ご飯と味噌汁があれば、とりあえず赤ちゃんを栄養失調に陥らせずに済むんですからね、いやまったく凄いものです。

 心強きファストフード。しみじみと旨し、丁寧に味わう時間。慌ただしいいただきますも、なだらかにしてくれるソウルフード

 今日は雨降る中、美味い味噌を求めて下町亀戸にて、味噌屋さんで白味噌をみつくろってきました。今は亡き母方の祖母が毎年手作りしていたあの味を求めてたくさんの味噌樽の間を迷いながら物色したのですが、なかなかこれと言った物には出会えず残念でした。一方、店主様の親切なお勧めにより、我が家の食卓をにぎわす新しい味噌をご紹介いただけたので、しばらくはそちらで楽しみたいと思います。

 特別でも何でも無い「味噌汁」。わざわざ、あえてしたてる御馳走ではないからこそ、じんわりと身に染みる我が家の力強き定番。

 指先を合わせ、いただきます。捧げ持つ一椀に、腹の底から幸福を呼び起こす、温かく香ばしい甘やかな湯気。