執筆式健康法

　明らかに擦り減りながら書いている時もあり、吐き出しながら書いている時もあります。どのような形にしろ自分の内なるモノを表に放り投げる行為は、精神的な「自己」の引っ越しみたいなものだと思う事があります。内面に散らばっていた名付けようのない事象を、ひとまず箱詰めして名札を貼り、崩れぬよう積み上げて行きます。またそう複雑でなく、刹那的なアイディアの類はポストイットで簡単に区分けして紐で縛るくらいで十分でしょう。

　大まかに表現すれば「苦しい」と分類出来る感情でも、モヤのような塊を小分けにして袋詰めしてみたり、観察しやすいようにクリアケースに入るサイズにまとめてみたりすると、ハッと別の捉え方が出来るものです。この苦しみは、大半が苦しみに似た何かであるだけで、要するに解決しなければいけないのは、根源のコレなのか、と確信が持てる事もあります。ある時は、その苦しみのつまらなさに驚く事もあるのです。負の感情にクローズアップし過ぎていて、肝心の周囲の状況を全く把握出来ていない事さえままあります。

　書くほどに、自分がスルスルとほどけてしまうような感覚です。文字を書く事は、私にとってすでに娯楽です。癖になる健康法。