私が辿り着けぬ場所
子供達にとって父親である私の主人は、いつまでもヒーローです。正確には「かつて主人であった人」ですが、書類上は未だ夫婦です。昨今は「卒婚」という表現があるそうです。婚姻関係にはあるけれども、全く別の生活を営む夫婦の事を指すとか。これは同居、別居に限らず、本人達さえ合意であれば、そのような括りだそうで、法律上の規定はなく、別棟に暮らしていれば単なる別居と判断されます。
ですので、詳しい事が解らない子供達には、自分達の親は別々の家に暮らしている不思議な両親との認識であるに違いありません。別居当初は、私も穏やかな精神状態ではありませんでしたから、半年間ほどは弁護士さん伝いで主人と連絡をしておりました。
それでも、何と言おうが主人が息子達の父である事には変わりはありません。私と共に進む人では無かったのだとしても、息子達の人生には無くてはならない人なのです。
「母親」と、偉そうに名乗ってみても、やはり男の子には男親の重みは格別です。人間的に壊れているどうしようもない親というのでなければ、男子には男親でしか補えない何かがあるのでしょう。
時々、大人びた顔で、遠くを観ている長男に、かける言葉を失くしています。