雨にかざす。
季節の変わり目には、よく雨が降ると言います。細く降る長雨であったり大地を洗うような豪雨であったりします。遠く雷を聞くこともあるでしょう。モヤモヤとすっきりしない気候に体調を崩す人がいるかも知れません。
水は、いつも何かを連れて来ます。降って来るモノも、流れていくモノも、溜まるモノも、うねるモノも、澱むモノもあります。長い間、水滴に打たれている石は、水が接する箇所だけ抉り込んだように削られていきます。凄まじい話であると、例えば、水に浸され続けた人間は、最後には綺麗に溶けてしまうという事です。ほとんどの金属を溶解してしまえる王水をも凌ぐ溶媒が「水」であると何かの折に耳にしました。
神秘的で、恐ろしく、ありふれていて、貴重で、美しくもあり、壮絶でもあります。
せせらぎや瀧音を聴くだけでも安らぎ、雨音や波音に懐かしさを感じます。水の気配が側にあるだけで、深い眠りに落ちてゆきそうになります。
晴れた日も喜ばしいですが、雨の日にも静かな世界を楽しみたくなる私は、季節の合間を縫うような雨音に聴き入るのです。
冬の朝に降る凍える雨が、音も無く、植栽を濡らしています。ひとおき、ひとおき、何かを惜しむように降る雨。