あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

心の海

 肝心な部分、本質の部分は、たぶん、言葉の力くらいではどうにも動かせないのではありますまいか。表現したい事の真髄、または真価は、私達が情報をやりとりする道具としての「共通語」程度で扱える厚みのものではないのですよね。

 だとするならば、私達が解ったような気になっている相手の事も、本当はいかほどを把握出来ているか怪しいものではないでしょうか。時に、表現の仕方すら解らない自分の激情や、もっと言えば、ぶつけようのない怒りや、身をよじるような悲しみや、伝えても伝え足りない感謝の気持ちなどは、それこそ言葉如きの矮小な記号で扱いおおせると錯覚することすら、おこがましいのかも知れません。

 言葉に出来ない世界にこそ本当に重要な何かが存在しているのだとすれば、その「共通語」の「言葉」でさえ、満足に獲得し得なかった人の想いを、私達はどのようにしてすくい取る事が出来るでしょうか。

 尋常小学校にも家の事情で通えなかった祖母は「私には学がないから」と生前申しておりました。深い愛情と、細やかな思いやりと、豊かな知恵を持った人でした。漢字すら書けなかった彼女の「心の海」を、それでも私達はきっと、泳ぎ切れなかったことでしょう。