おみそしる
木椀に注がれた味噌汁を、一口頂戴する、あの瞬間の充足感は言葉に言い表しにくい。満足感というよりも、安心感に近い、じんわりとぬくもってくるような気持ちになる。
椀に添わせ指先を丸く形作り、容器を優しく包み、滋味をいただく。
他の食べ物ではこうは感じないのだが、私はいつも、味噌汁だけは違うもののような気がしてならない。
「授かり物」という言い方があるが、そのような気さえする。別に上等な一番出汁でこしらえなくても良い。具も青物、なまぐさ、根菜、餅、何でも構わない。食す作法も、正式な形があるにしろ、家庭で給される範囲では、下品でなければそれで良しである。
味噌の入った汁物ならば、味噌汁、である。大ざっぱ過ぎて、その包容力に唖然とする。
熱くても旨い。人肌でも旨い。冷めても旨い。変な食べ物だ。
泣きっ面の子供を助けにくる地蔵様のようにおおらかで、力強い。
元気になあれ、元気になあれ。
悲しかった気持ちが、報われる。