選び、掴む。
陣痛の終盤から胎児が排出されるまでの過程を、10回も連続で味わえば、きっと死んだ方がマシくらいには、絶望を味わえるに違いない。オーバーでも笑い話でもないくらい、命を送り出す作業は凄まじい。
母体からすれば、それだけの恐怖があり負担があるわけだが、それは生まれようとする側、胎児の生きる意志への挑戦でもある。身体を割かれる衝撃が母に加わっている最中、外界への進路を死に物狂いで探り当てようとする子の奮闘があるわけだ。
「お前、そうまでして本当に、生きたいのかい」と、子供らは自分を押し包む世界から問われて生まれて来るのだ。
この世への覚悟を問われて誕生する。
今は、兄弟喧嘩も、お漏らしも、寝坊もする手のかかる息子達だけれど、息をせずに生まれた長男の姿も、黄疸で死にかけた次男の姿も、お母さんは知っている。
不謹慎な言い方だけれど、生きるのを諦める事もできたのに。
お母さんの人差指をギュッと握った君達の小さい手。