あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

魔法の書

「君達はどんどん大きくなるね」と感嘆すると「じゃあ、お母さんはどうなるの」と眉を上げる子どもたち。「そうだね、お母さんはこれから、小さく小さくなるんだと思うよ」と笑ってみせると、「小さくなってどうなるの」と身を乗り出してくる。底なしの探求心が面白かったので、こちらも大真面目な声を作って「小さくなって(両手で水をすくうような形を作りながら)これくらいになって、最後には見えなくなっちゃうんだよ」と生命の種明かしなどをしてみせてやった。次男はそうすると「なーんだそんなことか」という表情になり、即座に「僕がお母さんを産んであげる」と言ってのけたのだった。

神秘的で及びもつかない宇宙の謎も、きっと彼にとっては菓子箱の蓋を開けるように簡単に解き明かしてしまえることなのかもしれない。

「産み直してくれるの?」と念を押してみると、「僕が産む」と本当に満足そうな顔でただ彼はニコニコしている。赤ちゃんを誕生させる難題について「僕」が主役になることはないし、一つの命が終わることは誰にでも引き留められることではないし、先に旅に出てしまう母が、「僕」に付き添って彼の一生を見届けることは、たぶんできない。大人はもう魔法使いを辞めてしまった人が多いから、彼が嬉しそうに語る魔法の話には少し冷めた寂しい相槌しか打てなくなってしまっている。

だけれど、私を何度も生き返らせると約束してくれた息子は、確かに私の息子で、私がもうすでに魔法使いを辞めてしまったことなどは全然知らないままだが、それなのに、彼の迷いのない魔法の言葉は、深く、深く、私を励ますのである。

私は彼から「もう、死なない」魔法をかけられた。小さくなって見えなくなるけれども、いなくなってしまわない設定の人になったのだ。

本当にありがとう。

君の親でいさせてくれたことを、心から光栄に思います。