解りにくい人の、解りやすい想い
九州男児の主人は
筋金が背骨に一本入った
「男児」です。
ご時世に逆行しているのも
自分なりの信念で突き進んでいるのも
承知して、
いささか残念ではありますが、
私は連れ添っております。
有難うとか、
よろしくとか、
たった一言いってくれたらな、
と、
世の中の仲良し夫婦を眺めては
溜息を吐きたい時も
無きにしも非ず。
だから、
気持ちが行き違って、
いつもの倍ほど疲れて、
互いにどこへ向かいたいのか
見失ってしまう事もあるんですが、
ふと、こんな御馳走を並べたテーブルで、
気難しそうなニコリともしない主人の顔を見ながら
余計なおしゃべりなどせず、
黙々と、箸を上げ下ろししていると、
自ずと笑ってしまう事があるんです。
麻婆豆腐、
親子丼、
焼き鳥、
モッツァレラピザ、
おでん。
やたら長い名前の付いた
お洒落なディナーなどではなく、
庶民的な、
もっと自己主張のしっかりした食べ物が
好みに合う主人が、
さして感動した素振りも見せず、
私の前でフォークやナイフを動かしている。
何も言わない所をみると
不味くはないのだろうけれども。
私を喜ばせようと
隠密裏に計画していたのは、
知っています。
貴方の心遣いは、
派手でなく、
恩着せがましくもなく、
あまつさえ、
不愛想という厄介なオブラートに
何重にもぐるぐる巻きにされているけれど
私は、
貴方の
伴侶ですもの。
解りにくい人の、
精一杯の私への労いの想い。
確かに、
頂戴いたしました。
御馳走様でした。
今日の日を
有難う。
100人の君のファンになる。
本当に
心底好きだと
それのどこが
好きなのかという質問が
実に無意味だという事に
気付く。
初めてのゲレンデに怯む事なく
小さなそりで挑んでいく君も、
勇気を出して
独りで知らない人達の中で
頑張る君も
転んでも
こちらを振り向きもせず
折れない心で前を見る君も
とてもとても眩しい。
遠い場所に出掛けると
新しい君を発見する。
生意気で、
そのくせ甘えん坊な君が
世界に触れ、
自分を切り拓いていく。
私は、
今日もまた
驚きの眼差しで、
君を
見出す。
何度も
何度も
君は私を虜にし
私は君を追いかける。
ファンでいられる事が
こんなに嬉しい。
くるくる変わる君の姿を
そばで観られる事が
こんなに幸せ。
100人の君に
無限大のエールを。
こら、ちょっとそこへ座りなさい。
息子、
聴いてるんですか。
何ですか、
その顔は。
「かっこいい」は、男を黙らせる。
「かっこいい」は
言わせてもらうが
「無敵」である。
殊に、
ターミナル駅で目撃する
新型車両のドッキングシーンなどは
最上級レベルのかっこよさだ。
加えて、
お弁当箱が
大好きな車両の形をしているだけで、
その旅行が
ド派手に愉快なのは決定している。
それから、
乗車中の車両内探検で、
偶然通りかかった
特別室。
少し失礼して。
ふわっふわの皮張り椅子に腰掛けてみる。
室内の空気までもが、
ふわっふわ。
毛足の長い絨毯が、
背筋をピンとさせるよう。
探検中の「男」は、
「かっこいい」に
沈黙する。