手元の竿が跳ねたのに驚いて、私は思わず立ち上がった。 支えていた竿は大きく揺れ、糸先が突き立っている水面に波紋が広がった。夏の陽にじりじりと炙られて、釣れぬ魚と根比べをしているうち、どうも居ながら寸の間の眠りに落ち込んでいたらしい。一本切り…
曇り空は、嫌いではありません。 霞がたなびく空も、鱗雲が覆う空も、物語のようなものがそこにあるようで、私にはむしろ表情豊かに思えるのです。 中でも夏の空が存在感の豊かな雲に遮られる様は、とても神秘的で妙味に溢れています。邪魔な物を吹き払うよ…
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