いつかの空を憶えていたなら。 ※閲覧注意
たおやかな色彩を持たない
無作為な雲。
逆説的な事だけれど
こんな雲が風に千切れて走っていくのを
見上げていると、
自分が強固に大地へ縫い止められているのを
再確認させられる。
無責任に
飛び散ってしまえないように
無法に
駆け巡らないように。
重力は私を手放さない。
そんな世界の折り目正しい窮屈な蒼い道で
一つの亡骸を拾った。
諦めたのだろうか。
安堵したのだろうか。
追い詰められたのだろうか。
悟ったのだろうか。
抗ったのだろうか。
受け入れたのだろうか。
鮮やかなその熱の行方を
私は推し量る事しか出来ない。
私はここから
もう一度、朝の散歩を続ける。
この鳥は動かぬまま
私の去っていくのを見送る。
私は歩いて歩いて
家へと還り着く。
私だけが
歩いて歩いて
生きるものの輪の中へと
還って行く。
さよなら。
また、
いずれ。