シュトレンとおんぶひも
日が傾いて気温が下がると、
冷たい窓ガラスの外は
北風が強くなる。
すると機嫌よくはしゃいでいた次男が、
ムズムズと泣き声を立てる。
心細いのか、
眠いのか。
すっかり重くなった赤ん坊を拾い上げ、
おんぶひもで背中に結ぶ。
私の背後で、
湿った嗚咽と、叩きつけられる小さな拳。
産毛の生えたドングリのような頭を
ごりごりとなすり付けながら、
物分かりの悪い母を責める。
可哀相に、
赤ちゃんは気苦労が多い。
泣き疲れて眠るまで、
私は少しの間、物言わぬ石になる。
荒々しい寝息が聞こえ始めると、
ようやく安息が訪れる。
鬼の居ぬ間に、シュトレン。
聖なる夜を心待ちにする人達が
美味しいコーヒーと気の置けない人達とで
囲む異国の菓子。
懐が心もとないので大きなそれは買えずじまい。
とにかくひとときの母の贅沢として、
健やかな息子よ、
しばしの休息に目をつぶっていてくれたまえ。