あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

栗匂う闇

蛍をよけながら夜の田んぼ道を歩くなどは、東京郊外に生まれた我が子には未経験の事だ。熱の無い黄緑色の明滅が、風のない夜闇の中に点と線になって行き交う。梢に止まって動かない光、川面に争う光、危なっかしく地面に降りる光、気ままに見えるがそれぞれに懸命な光であるのだ。

蛍を物珍しく恋しく思うようになったのはいつからか。栗の花が高く匂うこの頃、今にも空が崩れて降り出しそうな夕暮れから明方までを、蛍はポヤポヤ、夜の中を無尽に飛ぶ。感傷的になるのは本当に日本人の勝手で、気楽に綺麗な事をほめたたえれば良いものを、そこへ亡き人の魂やら、想い人への情念やらを詩的に結び付けたがる。それも情緒、趣きと、縁側に酒肴を並べる人達もいる。

子供がかざす団扇に煽られ、可哀相な虫は、遠くに吹き飛ばされる。無慈悲な事をするでない、と年寄りが幼い人をたしなめる。自分が起こす風で、右往左往する光が面白く、子は無邪気な夜更かしをする。