あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

富士と夕焼け at スーパー銭湯 

大衆浴場の壁画は

松原を従えた富士山、と

相場が決まっている。

 

昔懐かしい銭湯は数を減らし

昨今の贔屓は

スーパー銭湯

 

二階建ての食堂から

ガラス越しに晴れた夕空。

湯上りに眺める景色に

遠く霞む富士山があったら

それでも

私は、

その情景を好ましく思う。

 

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浮かび上がる紺色の富士山。

街灯りの裾模様を引きずって

暮れ行く空に

佇む。

語る背中

男子を育てていて実感するのが、

彼等の聴覚は

遠い場所の音を感知しない

という事。

「遠い」という表現、

これ、物理的にも、心理的にも

当てはまります。

 

むやみに

男子を

台所や居間から

呼びつけては

ならぬのですよ。

 

男子には、

男子として、

成さねばならぬ事が

ござりますのでな。

 

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俺がやらねば

誰がやる。

 

そうなのです。

母は

たまに

無神経にやらかしてしまうのですが、

彼等の集中力を

大した用事もないのに

中断させてしまってはならぬのです。

 

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何用でございますか、母上。

只今、それがし、別件にて

取り込み中でございます。

急ぎの用でありませなんだら、

しばしあちらでお待ち願いたく候。

 

外野の雑音が

何一つ聞こえていない程に

熱中して取り組み続ける。

そういう時は、

往々にして

男子は背中で語ります。

母は、

彼等の「集中力」の糸を

ぶっつり切ってしまわぬよう

そーっとそーっと忍び足。

 

私には

及びもつかぬ斬新な発見が

そこにはきっとあるはずなので。

 

「ただいま」と呼び掛けられて

初めて

「おかえり」と歩み寄るだけの

風景の一部であるのが

よかろうと。

 

和食・洋食・中華・弁当

日本の

弁当は

文化であると

どこかの料理研究家か

民俗学評論家が

発言していたような、いなかったような。

 

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料理は

熱い物は熱いうち

冷たい物は冷たいうち。

調理する側の理想と

提供される側の食欲の交差点に

満足がある、のだろう。

中でも、

弁当というのは

携帯食で非常食で

時に家庭的で、

はたまた御馳走で。

属性も曖昧で、

常温のくせに

妙に美味くて、

 

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封を切った時の

高揚感は、

他の物に例えようが無い。

そして、

映りゆく景色を眺めながら食べ進める

旅情たっぷりの弁当ほど

私を黙らせる物は恐らく、無い。

峠の釜めし』1,000円。

しかと、その名を覚えたぞ。

母、ゲレンデに立つ。

子供というのは

ある程度大きくなり、

自宅の留守番を頼まれるくらいの

年齢になると、

一人きりの退屈を紛らわせる為に

しばしば、

奥まった場所にある本棚とか

滅多に開かない戸棚とかで

自分達の家族写真が納まった

カラフルなアルバムとは別の、

古めかしいハードカバーの

重い写真ケースを偶然発見したりする。

無駄に重厚なそのケースの表紙を

後ろめたい物を盗み見るように

彼等は、こっそり開く。

そこへ飾られてある写真には

例えば、

松や楓が植えられた広い庭で

直立不動で半ズボンを掃いた

おかっぱ頭の男の子が立っていたり、

肩パットが入ったスーツを着た

見知らぬ男性が、

すかしたポーズを取りながら

サングラスをかけていたり、

訳知り顔でうずくまる猫のような

改まった表情で御屋敷の縁側に腰掛ける

老婆がこちらを見ていたりする、

そういうどこかしら「異世界」が

映っているものだ。

 

我が家の息子達も、

わんぱく盛りを迎え、

働きに出る私に向かい、

「うっせー、クソババア」の一言でも

言える年頃になったら、

放課後の退屈な時間を

もしかしたら自宅探検の遊びに

費やすことがあるかも知れない。

 

そんな時、偶然に見つける秘密の「異世界」が、

堅苦しい、厳かなものではなくて、

自分達を産み育てた「クソババア」の

若かりし頃の、

若気の至りの、

こんな弾けた写真だったなら、

ちょっと、

面白いのではないだろうかと、

そう企みながら、

私は

宝の隠し場所を記す悪党のように

日々、無心になってカメラのシャッターを切る。

 

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