あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

故人を偲ぶ。

 

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 主人は70歳で人生を終える、と心に決めているそうです。

 男性の平均寿命よりも、少し若い一生ですね。希望は「生涯現役」。現在、47歳ですから、後23年生きられるとしてここまでで人生の2/3を消費した事になります。

 健康な長生きに否定的なのではないのでしょうけれど、彼の一番の関心は恐らく、今ある自分の社会的貢献度です。社会的立場、しかも、建設的な積極的な関わり方が出来る位置での社会的立場に彼は重きを置いている。

 男性だから、女性だから、というくくりはあまり適切ではないですが、彼が育って来た環境、特に青年期までを送って来た家庭環境は少なからず今の彼に大きな影響を与えていると思われます。

 主人は熊本県生まれ、両親も熊本県の方で、そのまた親御さんも熊本県の方。男三人の兄弟で長男として良い意味でも悪い意味でも「将来の本家を継ぐ人」として育ちました。今時、家長制度を云々するのは一部の人々にとって目くじらを立てたくなるもののようですが、そういった土台があった事も一因として「主人」が出来上がっているのは確かです。

 仕事に関しての展望を口数少なく話してくれる事もありますが、彼が自分の将来を語る事はまずありません。血を分けた子供達の行く末についても言及したことがないくらいです。そのような事を言うとまるで血も涙もない冷血漢みたいですが、決してそうではありません(と、想像しています。その事についても深く切り込んだ事はないので真実のところは謎なんですけれど)。私が思うに、彼は、とてつもない現実主義なのです。将来は、やがてどうしたってやって来る物、なんです。こんな未来があったらな、と希望を持つ事は素晴らしい事です。ああいう世界に住んでいたいな、こういう夢を叶えたいな、あらゆる望ましい事を願うのは別に否定される事ではありません。ただ「そうある為」に今の自分が出来る事が必ずあるはず、と、たぶん、主人の視点はそこに向いている気がするのです。願望はあくまでも願望として、現実の自分を前に進ませる動力になります。横道にそれたくなる自分を本来の道に戻す動機にだってなります。だからこそ「夢」を持つのは悪い事ではないし、むしろ望ましい事なのだと思うのですが、夢は自分を引っ張り上げるきっかけに過ぎないモノであって、決して論じたり語ったりするようなモノではない。きっと主人にとってはそんな考えが優先するのだと想像します。

 リアリスト、シビア、ニヒルリニアモーターカー←あれ、違う。

 そもそもこの長寿社会において70歳で終わると決心している人に、気長で悠長な幻は蛇足であって、絵に描いた餅であるのかもしれません。今の自分を満足出来ないで、どうして少し先の自分にも納得が出来るだろう、そのように考えてでもいるのかも知れません。元々、ドリーマーで楽天的な私の気性とは正反対の彼ですから、私の目の付け所が彼にとっては非現実的で非効率に映る事もありました。喧嘩の原因がそういうズレであった事が思い返せば、いくつもいくつも。

 今になって思う事は(せいぜい想像の域を出ないんですけれど)、自分が立っている場所を、持ちうる限りの力と知恵と情熱できちんと大事に出来ている(そうしようとしている)彼の姿勢に、私は少なからずの畏敬を感じるという事です。

 夢を振りかざさない彼のやり方は、今風には恐らく時代錯誤。未来の展望をでっかく豪語する事こそカッコイイという風潮には、全く持ってそぐわないし、ともすれば、否定的な彼の背中は「旧体制然」として反発されてもおかしくない。

 一面的に眺めれば、夢の無いおじさんの古臭い生き方、で結論付けられてしまう生き方かもしれませんよね。だけれども、大きな城を築城するのに、最初の石垣を立てる事をしないで、どうして見上げるばかりの天守閣を作り上げる事が出来るんでしょうか。

 享年70歳。生涯現役。悔いのない人生を、彼は歩みました。

 それの何が恥ずかしい事でしょう。

 生きる意味を求めて、自分が何に成りたいかを求めて彷徨い歩く人が多すぎるように、私は感じます。そういう私も「融通の利かないおばさん」としてレッテルを張られてしまうのかもしれませんが、それはそれで何だか愉快に思うようになりました。それ相応の年代になってしまった証拠でしょうか。

 何をして来たか。今の自分に何が出来るのか。自分を納得させる為に出来る事は何であるのか。

 そう言う事を「ついで」に行うようになっては駄目な気がするんですよね。与えられた自分を精一杯フル活動で酷使してやってこそ夢なんてものが「ついで」に叶うんじゃあないかしら、と、生意気な事を考えちゃうんです。