あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

冬を纏う子

 古びた物、ひなびた物に愛着を覚える私ですので、和室がある物件を探して、なおかつ賃貸料も考慮して今の住処にたどり着きました。木造2階建てのアパートの2階角部屋です。内装はリフォームされていて、お風呂とトイレも別、昔風の間取りはそのままに各部屋にはガラス窓があります(トイレ、浴室、脱衣所にも)。

 大家さんには言いにくいですが、壁は薄く、雨戸を閉め切れば、かすかな隙間から外光が漏れてくる安普請です。早朝に寝室の室温計を見ると、外気温より3度ほど高いだけで、ここ最近は毎朝一桁台の室温しかありません。言うに及ばず、北向きの台所に至っては、明かり取りの大きな窓が北と西に開かれているせいか、体感温度は更に下がります。昨日は給湯器が凍り付き、朝から湯が出ませんでした。チョロチョロと申し訳程度に蛇口からしたたり落ちる凍えるような水で炊事をするのは難事業で、思わず笑ってしまいました。冬の厳しさが、しんしんと身に染みる朝夕に、今から春が待ち遠しい我が家なのでした。

 そんな過酷な状況の中、まず長男が良くない咳をするようになりました。喉が冷えているのだと思います。そこで、私のマフラーを譲ることにしました。しかし、困った事に子供は体にあれこれ巻かれたり、付けられたりするのを嫌がります。大人がよかれと思って着せようものなら躍起になって手強く逃げ回ります。防寒の利点を伝えてもそれはこちらの都合ですものね。身動きが鈍るような装備は、子供には鬱陶しいに違いありません。

 ようよう彼を説き伏せて私のお下がりマフラーを巻いたのですが、窮屈になった首元に息子は不満顔でした。元々そのマフラーは私にとってもお下がりでした。母が香典を差し上げた親戚から、返礼の為に送られた物だったと思います。バーバリーのカシミヤ製で、毛羽は気にならない滑らかな品ですが、彼にとって迷惑であるのには変わりません。

 丸い顔にマフラー姿は、彼を見つめる私にとって、その時、とても新鮮でした。首へ巻物をしている彼の姿が、急に大人びて見えたのです。

 マフラーを巻くような「首」があるんだな、と、おかしくなりました。赤ちゃんの頃には、たっぷりした頬の肉と、むっちりした肩の肉に埋もれて「首」がいったいどこにあるかなど解らなかったというのに。

 居心地が悪そうな長男のマフラー姿に、妙な感慨を覚えた母です。子供のくせに、もう子供じゃない、不思議な生き物。