金でも切れぬ物
涙もろくて、本当にいけない。涙もろくなどなかったのだが、近頃、誠に涙もろくなった。
撮り溜めていた地上波放送の映画を観た。『殿、利息でござる!』で、泣いてしまった。
登場人物の十三郎と甚内、この2人の兄弟が、もう心底、よろしくない。弟を毛嫌いしていた兄と、強欲とばかり思われていた弟とが、互いに真実の元に歩み寄るシーンがどうしようもなく、熱く尊く、切なかったのだ。史実に基づく脚本らしく、原作者は歴史学者だという。全くのフィクションではないだけに、それを上乗せすれば余計に身に染みる。
ともあれ、兄弟だ。演技派の役者ぞろいでもあり一通りでない兄弟の縁やわだかまりが、さもありなんと思われるように描かれていて、軽妙な作品であるにも関わらず、私は途中から泣きっぱなしであった。兄は弱き者を労わる。弟はその兄を労わる。親としては堪らない。これを黙って見守る母・きよの心中やいかに、と、これまた泣き所なのであった。