あかりの森's blog

7歳、3歳の怪獣達と楽天家シングルかーちゃんの雑記帳。主にのほほん、時々、真面目。

「ぱれ部」活動日誌(『あかりの森’s bog』課外活動報告記):目黒から代官山へ

 目黒の『雅叙園東京』へ出掛けました。最寄り駅から新宿経由で山手線目黒駅下車です。東京に嫁に来て幾年か経ちましたが、東京は大都会ながらもあちこち至る所に坂道が組み込まれているのを何度経験しても私は新鮮に感じてしまいます。実際に我が家があるのも郊外ではありますが(最寄り駅から見れば)坂の上です。雅叙園が位置しているのも、目黒駅からグンと下った坂の果てです。駅とホテルとの高低差は軽くビルの3階分はあるのではないでしょうか。

 本日の東京は薄曇りの蒸し暑い夏日でありました。電車から下車して前のめりになりそうな下り坂を降りると、広い車止めを抱えた立派なエントランスが見えてまいりました。建物の内部はホテルと言うよりも、美術館を模したアミューズメントパークのように華やかな物でした。爪先を包む毛足の長い絨毯はお決まりとして、高い天井と、中華風の様な日本風の様などこかオリエンタルな印象のあるホテル内は、外界ときっちり切り離された異空間でありました。空気が変わると言うのでしょうか、圧倒される場所へ迷い込むと肌に触れる空気の密度や湿度が、産毛を逆立てさせるように感じるものです。中庭に面した大きな一面ガラスの向こうには、黒々と水に濡らされた石組みと、流れ下る滝、濃く茂った木々、鮮烈な苔の緑。鯉が泳ぐ池に面したラウンジを訪れ、まずはアフタヌーンティーセットをオーダー。式場として名高い場所だけあって、ウェディング用に設けられた半開放型のミーティングルームは幸せそうなカップルでほぼ満席。深緑が輝く中庭には前撮り写真を撮る白無垢の花嫁と紋付姿の新郎の姿。

 私達が子供連れと言う事もあったかも知れませんが、ホテル内は瀟洒な雰囲気の憩いの場という感じで、仮にも寛ぎの場所という印象は受けませんでした。当然と言えば当然です、ホテル全体がいわゆる「挙式の為の施設」として最高を目指しているので、そういう意味においてはかなり心躍る空間であると思われました。ちなみに特筆すべきは、ホテル内のレストルーム、つまりトイレです。一つ一つの個室がまさに「部屋」になってまして、手洗い完備で、豪華なのです。家賃が発生してもおかしくない程度には、広いのです。笑えない冗談に付き合っているような感覚になりました。

 主人は時々、思い立ったように東京の「名所」に家族を連れて行ってくれます。あまり統一性がないので、私も面白く興味深くそれに付いていきます。雅叙園の感想を訊かれたので、私は「ちょっとのんびりする、という感じでもないね」と返すと「そりゃそうだろう、ホテルとしての機能は完備しているけれど、メインは挙式と披露宴だから」との事でした。「(花嫁さんを眺めていたら)もう一回、結婚式、やりたくなっちゃったなあ」などと水を向けてみると「どうぞ、何回でもやって下さいよ」と鼻で笑われてしまったのでした。

 因みに、私は和装で挙式と披露宴を通しました。「もう一度のもしも」があるのなら今度は両肩を思いっきり大胆に出したドレスでヴァージンロードを歩きたいです。ヴァージンロード、もとい、セカンドロードですかね。和装はとにかく胸の締め付けが凄くて、せっかくのお料理も何一ついただけなかったのを苦い思い出として心へ仕舞っておる私でありました。

 目黒を後にして我が家が向かったのは、代官山でありました。昼前に到着したのですが、陽射しが時々照り付けて体感温度も急に上がったように感じました。渋谷区代官山は、世のお洒落自慢が必ず一度は訪れる場所と私が勝手に位置付けている街です。街、いや、私達が半日を過ごしたのは旧山手通り沿いに建つ『蔦屋書店』の一角です。本屋で一日入り浸り、というのが私の理想ではあるのですが、小説も雑誌も興味なしの主人と、騒ぎたい、触りたい、遊びたいの子供達とが同伴者であれば、悲しいかな、書籍巡りはお預けです。代わりに、その周囲に点在する玩具店やカフェダイニングで夕方までを過ごすことになりました。それでも時間は割と有意義に過ぎて行き、植栽が良い具合に木陰を落としてくれるので、ムシムシする気候ではあるものの、ぐったりとしてしまう事はありませんでした。

 玩具店を冷やかしに訪れた時には、なんと店先には水遊びが出来るようにサンプル玩具で組み立てた大きな模型が置かれてありまして、子供であれば誰でも自由に水遊びが出来るようになっておりました。そりゃあ、幼い人々にしてみれば、こんな魅力的な展示品はまたとありませんよね。我が家の息子達も夢中になって遊び始めました。流しそうめんに使用する「樋(とい)」のような半円柱形の青いプラスティック製のレールがコンクリートの地面にうねうねと敷かれてありまして、そこへ黄色や緑の知育玩具がゴロゴロ浮べられております。店の軒下に設置されており、特に柵は設けられてはいませんでした。水が満たされ、水路のミニチュアの如くなったそれに喰いつかない子供が果たしているでしょうか。

 長男も次男も時間を忘れて楽しむ様を主人と二人、近くの木陰から眺めていると、子供の為にとか、たまの休みだからとかにかこつけずに、もっと安上がりなものでも息子達は十分に休日を満喫出来るのだと再確認させられるように思えました。確かに、私や主人が子供時代を過ごした頃のように、裏の川へ橋の上から飛び込むやら、急流を渡って向こう岸へ渡るやら、用水路に膝まで浸かりながら小魚を獲るやら、は難しい事でしょう。水に触れるとしても、都会なら近場はプール、遠出にしてもきちんと整備の行き届いたオートキャンプ場や、海水浴場くらいでしょうか。庭をお持ちの家庭ならビニールプールを広げて、と行くのでしょうけれど、賃貸の狭小物件暮らしでは、風呂場でシャワーが精一杯です。こうして目の前で楽しんでいるオモチャの模型でさえ、持ち返っていったいどこに設置しようか頭が痛いような有様ですから、笑ってしまいます。でもそれだとてつまるところ「大人の都合」なのですよね。子供はただ、そこに水があって、オモチャが転がっていて、それだけでひたすらに楽しいのです。ここが代官山であっても、狭い我が家の風呂場でも、何だって良いのです。ちょっと頑張ってしまった大人サイドにはガッカリする事案かも知れませんが、平たくまとめてしまえばそういう事ですね。

 「優雅」も「粋」もありはしない我が家のお洒落スポット巡りは、こうして今日も終わりました。帰りの電車では、幸運にも座る事が出来ましたし、最寄り駅を乗り過ごしそうになるほど全員が熟睡しましたし、都会から引き上げて来た郊外の我が家は、ああ、やはり少し気温も低く感じられましたし、今年初めて蝉の声を聞いたのは、そのお洒落な代官山の一角のカフェダイニングでの食事中でありましたし、今回もまずまずの活動記録が出来上がったのではないかと、私は思っておるわけであります。