その先

　「合理的でない物の中に「その先」がある」。この言葉を聞いた時、とても「いいなあ」と私は思いました。無人ロケットや、無人深海探査機が各国の最先端の技術を駆使して製造されている世の中にあって、あえて生命の危機を犯して「有人」型を作り続けるのはどうしてなのだろうか、と考えました。研究材料を採取するだけなら、高性能な無人機で十分でしょう。有人にするが故に、乗組員の安全確保の為、莫大な投資が必要になるケースもあるわけです。生命維持装置、緊急避難装置、防護空間これらを整備する為に費やされる時間と費用は、無人にする事により全てが「コストカット」のみならず、余剰を別分野に振り分ける事さえ可能なのです。いずれ有人のものは、無人の同種に駆逐される運命にあるのでしょうか。私達は、自分自身の肉体の生命活動にだけ没頭すれば良い世の中が到来するのでしょうか。

　美しい映像は高機能のカメラや、動画が伝えてくれ、電話や手紙が無くても、メールで全ての「伝達」行為は成り立ちます。

　が、私達は旅に出掛け、直筆の手紙を送り、親しい人と抱き締め合いたいと思うのです。

　合理的でないのに、喧嘩もするのに、そこに哀しみすら、あるというのに。