優雅に、右、左。
最初に
覚えたのは、
おっぱいが
どこにあるか。
次に
気が付いたのは、
おしっこやうんちを
すると、お尻がムズムズ
気持ち悪いっていうこと。
そのうち、
何故か
この世界には
明るい時間と暗い時間が
あるようだ、と発見。
それから
常に側にいて
あたふたしている人達が
自分が泣くと
更にあたふたするらしいと
いう事。
目を開けて
口の端をちょっと吊り上げたら
面白い事に
周りで自分を見下ろしている
人達も同じように
口の端を吊り上げる。
上手に出来ない事があれば、
手を添えてくれる人がいて。
前には
白く平たい物から
細長いヒモみたいなモノを掬って
食べている誰かがいる。
あれは、なあに。
「すぱげっち?」
あのキラキラした道具は?
へー、
「フォーク」って
言うんだね。
あ、僕、あの人知ってるよ、
確か、
「お兄ちゃん」って言うんでしょ。
僕、あの人、大好きだなあ。
聞いて、聞いて、
僕ねえ、あのね、
あのね、
いっぱい、
良い事、解っちゃった。
「お母さん」。
少しずつ
世界とつながっていく子供達。
お腹の中でプカプカ浮かんでいた頃は
天も地も、
右も左も、
朝も夜も、
暑いも寒いも、
全部を超えて、
同時に全部を知らなかった人達。
こちらが右手、
こちらが左手。
君達が繋がろうとしている世界は
広大で、不安定で、精密で、理不尽で、
恩寵に溢れ、時に厳格。
君を包み、
君を導くこの世界が、
君と別の誰かが連鎖してく
温かい広野であるように、
私はここで、
「母」でいる。