はるの小道に。
さくらの季節だから
思うわけじゃなくて
何かを遠く見送るたびに
私の胸に浮かぶ事。
振り返らない貴方の背中を
見続けてきたから思う事なのかしら。
見届ける事に慣れて来たから
実感する事なのかしら。
大きな貴方の背中も
思い出の一部に収まって
いつか私が、
真っ白い桐箱として
両手に抱き締める日が来たら
私はやっぱり
しみじみと懐かしく
思い出すのかしら。
貴方と子供と春日を浴びて歩いた野道で
偶然見つけた小さい花。
そのいたいけな青い花の色を
慰めのようによみがえらせるのかしら。
泣きたいのではなくて
嘆きたいのではなくて
まして労わって欲しいわけでもなくて
静かに俯いていたい時、
貴方はやっぱり
振り返らない背中を見せたまま
このさくらの風景の中で
私を励ますのかしら。
やがて、私は
幸福の光の中で
あるかなきかの粒になって
零れ落ちて
吸い込まれて
ぼやぼやと薄らいで
やって来た道を引き返す時、
愛おしい息子達の両手に抱き締められて
きちんと君達に
最後の感謝を残せるかしら。
さくらさく。
さくらちる。
さくらかおる。
さくらの小道。